主な診療と治療

転移性前立腺がんの治療

前立腺がんが骨に転移していると診断されました。どのような治療がありますか?

男性ホルモンを下げる、あるいはその作用をブロックする内分泌治療(ホルモン治療とも言います)が治療の中心になります。前立腺は、男性にしかない臓器で、前立腺の細胞は正常でもがんになっても男性ホルモンに大きく依存していることがわかっています。したがって、男性ホルモンの作用をなくせば、前立腺がんの細胞が死んだり弱ったりします。内分泌治療は、90%以上の患者さんに効果があります。

骨転移による痛みや神経圧迫症状が強い場合には、放射線治療を施行することがあります。放射線治療には外照射治療と、ラジウム223の注射による治療があります。骨の破壊を抑制する、骨修飾薬(ビスホスホネート製剤、RANKL阻害剤)を使用することがあります。

内分泌治療の具体的な方法を教えてください。

男性ホルモンがつくられるのを防ぐ方法と、男性ホルモンが作用するのをブロックする方法があり、これらを組み合わせて行う場合もあります。ほとんどの男性ホルモンは、精巣(睾丸)でつくられるため、手術で精巣を摘出(外科的去勢術と言います)すれば男性ホルモンが低下し、前立腺がんの内分泌治療として行われています。またGnRH(LH-RH)アゴニスト/アンタゴニストという注射を1ヶ月、3ヶ月、あるいは6ヶ月おきに注射し、精巣で男性ホルモンがつくられるのを防ぐ方法(内科的去勢療法)があります。外科的去勢術と効果は同じですが、手術に対する心理的抵抗感などから内科的去勢療法を選択される方がほとんどです。男性ホルモンの作用をブロックする方法としては、内服薬が数種類あります。さらに、最近では治療早期からより強力な内分泌治療が行われるようになってきています。担当医とご相談ください。

内分泌治療の副作用にはどのようなものがありますか?

顔が熱くなったり、汗をかいたり、動悸がしたりするといった女性の更年期障害のような症状が数秒間続くことがあり、これは「ホットフラッシュ」と言われています。また、性欲減退や勃起障害も高い確率でみられます。長期の内分泌治療により、骨粗鬆症を起こしやすくなるため、骨粗鬆症に対する薬剤を併用することがあります。他に、肥満、うつ症状などが起こることがあります。

内分泌治療で、前立腺がんは治りますか?

内分泌治療の効果は永続的ではなく、だいたい数年後から徐々に治療が効かなくなってきます。初期の内分泌療法が効かなくなった病態を去勢抵抗性前立腺がんと呼びます。ただし、内分泌治療の効果の続く時間は個人差が大きく、骨に転移のある前立腺がんの方でも、内分泌治療だけで10年以上コントロールされる場合もあります。

文責:松岡・上原