治療と検査開発

小径腎腫瘍の精緻な画像診断

小径腎腫瘍に対する最適な診断治療戦略の確立を目指して

近年、画像診断の進歩と普及により、小さな腎腫瘍と診断される患者さんが増加しています。多くの患者さんが、健康診断や、他の目的で撮影された画像検査によって、偶発的に腎腫瘍を指摘され、外来を受診されます。通常、大きさ4cm以下の腎腫瘍を小径腎腫瘍、これががんである場合には小径腎がんと称しますが、このように小さい段階で診断される腎がんの予後は一般に良好であり、手術により高い確率で根治が得られます。

一方、最近の欧米からの報告では、腎がんの疑いで手術を受けた小径腎腫瘍の患者さんのうち、20〜30%が良性腫瘍であった(がんではなかった)とされており、小径腎腫瘍の診療において、良性か悪性かを手術前にいかに鑑別するかが、新たな課題となっています。比較的頻度が高く、かつ画像検査において腎がんとの鑑別がしばしば困難である代表的な腎良性腫瘍として、脂肪成分の少ない血管筋脂肪腫(angiomyolipoma: AML)、およびオンコサイトーマが挙げられます。当科では、これら代表的な腎良性腫瘍と腎がんを最大限鑑別すべく、精緻な画像診断の実践に取り組んでいます。

超音波検査などで小径腎腫瘍が疑われた場合、通常はまずCT検査(可能であれば造影CT検査)が施行されます。ここで、当科の解析結果から、小径腎腫瘍で手術が検討される患者さんのうち、全体の約7割では、造影CT検査において典型的な腎がんの所見が得られ、これをもって極めて高い精度で腎がんと診断できることが分かりました。一方、残り3割の患者さんでは、CT検査のみでは良性腫瘍の可能性を否定できない所見が得られます。これに対して、当科では積極的にMRI検査も施行し、より正確な良性悪性の診断を試みています。特に、脂肪成分の少ない血管筋脂肪腫に関しては、造影CT検査とMRI検査を段階的に施行し、両者の所見を組み合わせることで、腎がんである確率、あるいは血管筋脂肪腫である確率を、高い精度で層別化できることを報告しています(図参照)。

腎腫瘍に対する生検は、出血や腫瘍細胞播種への懸念から歴史的に忌避されてきましたが、近年、このような古典的な概念が大きく変化しており、腎腫瘍の術前診断を目的とした針生検の有用性が、注目されています。多数例での検討から、腎腫瘍生検の高い診断精度と安全性が示され、適切な患者選択の元で施行すれば、小径腎腫瘍の診断における有用な選択肢の一つとなることが期待されます。当科では、小径腎腫瘍の患者さんにおいて、上述の通りCTおよびMRI検査の所見を用いて良性悪性の確率を層別化し、その鑑別が困難な患者さんに対しては、腎腫瘍生検の選択肢も提示しています。今後もさらなる検討を重ね、精緻な画像診断に基づく、小径腎腫瘍の診断治療戦略確立に取り組んで参ります。

  1. Fujii Y, Komai Y, Saito K, Iimura Y, Yonese J, Kawakami S, Ishikawa Y, Kumagai J, Kihara K, Fukui I. Incidence of benign pathologic lesions at partial nephrectomy for presumed RCC renal masses: Japanese dual-center experience with 176 consecutive patients. Urology. 2008; 72: 598-602.

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