主な診療と治療

前立腺がんの診断

前立腺とはどのような臓器ですか?

前立腺は、男性のみにある臓器で、膀胱の直下にあり中を尿道が通っています。元々はクルミの実くらいの大きさです。前立腺は,精液の一部をつくり、それが精子(これは精巣でつくられます)を防御したり栄養したりする役割をしています。

最近、前立腺がんが増えていると聞きました、どのような病気ですか?

前立腺癌の全世界における罹患数は2012年に年間約110万人、男性癌の14.8%を占め、肺癌についで、男性では2番目に多い癌です。本邦でも近年急増し、2015年には罹患数は年間98400人(第1位)、死亡数は年間12,200人(第6位)と予測されており、泌尿器科では最も重要な病気と考えられます。前立腺がんは早期には症状がないことが多く、治療成績も良好です。しかしながら、進行すると骨やリンパ節に転移しやすく、有効な治療はありますが完全に治すことは困難になります。

前立腺がんは、タバコや食生活などの生活習慣と関係しているのでしょうか?

前立腺癌との関連が推測されている要因としては、①食事や運動などの生活習慣、②肥満や糖尿病およびメタボリック症候群、③前立腺の炎症や感染、④前立腺肥大症や男性下部尿路症状、⑤環境因子や化学物質への暴露等が挙げられますが、いずれの要因についても相反する研究があり、はっきりしたことはわかっておりません。

前立腺がんは、どのような症状がありますか?

早期前立腺がんは、ほとんどの場合無症状です。したがって早期発見のためには、前立腺がん検診などを受ける必要があります。前立腺がんが大きくなりますと、尿が出にくくなったり、あるいは排尿の回数が増えたりします。また尿に血が混じることもあります。重要なことは、これらの症状は前立腺がんに特有の症状ではなく、例えば前立腺肥大症でもみられます。前立腺がんが骨に転移しますと、その部分の痛み(例えば腰痛など)を生じることもあります。

前立腺がんを早期発見するにはどのようにしたらよいでしょうか?

前立腺がん検診を受けられるのがよいでしょう。方法は,血液検査の前立腺特異抗原(PSA)測定と、医師がおしりから指を入れて前立腺を触って診察すること(直腸指診)の二つが勧められます。最近は、人間ドックなどでも前立腺がんの検査が含まれることが多くなっています。

誰でも男性は前立腺がん検診を受けるべきでしょうか?

ご家族に前立腺がんの方がいる場合は、ぜひ一度は前立腺がん検診を受けた方がよいと思われます。また、60歳以下の方であれば、一度は前立腺がん検診を受けてPSA値を測定すると、その後の発症リスクを予測することが可能であり、有用と思われます。
どのような検診にも利益と不利益があります。前立腺がん検診の場合には、期待余命が10-15年見込まれない場合には不利益の方が大きくなる可能性があります。年齢の上限については議論があるところですが、70歳以上の方でも、健康状態良好であれば、継続的な検診受診は有用の可能性があると言われております。

PSA検査の話をよく聞きますが、これは何でしょうか?

PSAは、前立腺でつくられるタンパクで、本来は精液の中に分泌され、精液の液化に関係した重要な働きをしています。血液の中にもPSAは少量存在しています。前立腺がんでは、この血液中のPSAが上昇することが多いため、早期診断に広く利用されています。一般に前立腺がんでない人のPSAは 4ng/ml以下ですが、4から10ng/ml(これは「グレイゾーン」といわれています)ですと前立腺がんの可能性は25%くらいになります。PSAが10ng/ml以上になりますと前立腺がんは50%以上でみられます。重要なことは、PSAのみでは前立腺がんの確定診断はできないこと、前立腺肥大症や前立腺炎などの他の前立腺の病気でもPSAはしばしば上昇することです。

前立腺の直腸指診とは何ですか?

医師が手袋をして指を患者さんの肛門に入れます。前立腺は直腸の前側に位置しており、指で触ることができます。前立腺がんが疑われるような硬い部分がないかを診察する検査です。

血液検査でPSAが「グレイゾーン」(4 から10 ng/ml)と言われました。どのような検査が必要でしょうか?

前立腺がんは、超音波検査、CT、MRIといった画像検査のみで確定診断することはできません。現在は、前立腺がんの確定診断のためには、前立腺生検が必要です。通常は経直腸超音波検査で前立腺を見ながら、前立腺のいろいろな場所に針を刺して組織を採り、顕微鏡でがんがどうかを診断します。直腸診や画像診断の結果を総合的に評価し、即時に生検を行わずに定期的なチェックをお勧めすることもあります。

前立腺がんの検査にMRIは撮ったほうがよいですか?

MRIは前立腺癌の局所病期診断において,客観的で信頼性の高い画像診断検査として位 置付けられております。形態を評価するT2強調画像に加えて,機能的な情報を加味するダイナミック造影,拡散強調画像を加えたマルチパラメトリックMRIにより総合的に評価されます。生検前にMRIをとることによって、MRI情報を活用した生検も可能となります。

精密な前立腺生検を受けたいのですが、どのような方法がありますか?

標準的には、初回前立腺生検として辺縁領域を含めた10-12箇所の多数箇所生検が、再生検では尖部や腹側を追加した多数箇所生検が推奨されております。生検前MRI検査における癌疑いの領域から選択的に組織を採取することによって(MRI標的生検法)、生検の診断能が上昇することが示されております。当院では、MRI画像とリアルタイム超音波画像の融合による精密な生検法を導入しております(MRI/US fusion生検)。

前立腺生検で前立腺がんと診断されました。どのような治療が必要ですか?

通常は、前立腺がんの広がりや転移の状況を調べるために、全身のCT検査(あるいはMRI検査)を行います。骨シンチグラフィを行う場合もあります。これらの検査は、早期前立腺がんでは省略される場合もあります。大まかに、1.がんが前立腺内にとどまっているもの(限局性前立腺がん)、2.転移はないけれども、がんが前立腺の外に広がっているもの(局所進行性前立腺がん)、3.がんが骨やリンパ節に転移しているもの(転移性前立腺がん)に分けられ、これらによって治療法がいくつかありますので、患者さんと相談して決めることになります。また、生検結果での前立腺がんの細胞の顔つき(グリーソン・スコアで評価されることが多いです)、PSA値、患者さんの年齢や合併症の有無なども治療方針を決める際に考慮されます。

文責:松岡・上原