主な診療と治療

限局性前立腺がんの治療

先日前立腺生検を受け、早期の前立腺癌がみつかったと担当の医師から説明がありました。次の診察で今後のことについて相談することになっています。どのような治療があるのか教えてください。

癌が前立腺の中にとどまっているのであれば、前立腺を摘出する手術(前立腺全摘術)か放射線治療が行われる場合が多いと思います。放射線治療には体の外から放射線をあてるもの(外照射)と前立腺の中に放射線を出す小さな金属の粒を埋め込む方法(小線源治療ないしブラキセラピーと呼ばれています)があります。癌がみつかっても条件が良い場合は治療をしないで様子をみることもあります。

がんがあるのに治療しないで良いのですか?

癌が小さい、癌細胞の顔つきが良いなどのいくつかの条件を満たす場合は治療をしなくても命に関わるようなことが少ないと報告されています。最近は前立腺特異抗原(PSA)の測定によりごく早い段階でみつかる前立腺がんが増えており、「治療をしない」方針を選ばれる方もあります。ただし癌が進行していないかどうか確認するため血液検査や場合によっては生検やMRI検査を繰り返す場合があります。

手術と放射線とどちらが優れているのですか?

癌の根治性という点からは、限局性前立腺癌では差は少ないと報告されています。しかしながら手術後に再発した方に対して、放射線治療が有効な場合がありますが、放射線治療後の再発に、前立腺全摘を行うことは原則としてできません。

前立腺癌にはホルモン治療が良く効くと聞いたのですが手術や放射線の変わりになりますか。

前立腺がんは男性ホルモンがあると元気になります。この男性ホルモンを抑える方法(内分泌治療あるいはホルモン療法)は前立腺がんの有効な治療のひとつですが、有効期間が限られている面があります。「がんを治す」という意味では手術や放射線の変わりにはなりにくいと思われます。ただし手術や放射線とうまく組み合わせることで治療効果をより良いものにすることが可能な場合があります。

手術はどのように行われるか具体的に教えてください。

前立腺全体と精嚢を摘出し、膀胱と尿道を吻合します。前立腺のすぐ脇には勃起に大事な神経がありますが、前立腺がんの状況によってはこれも切除します。また、がんの広がりを確認するため前立腺近くのリンパ節を一部とることもあります。

手術を受けると尿が漏れるようになると聞いていますが。

前立腺を摘出すると尿道括約筋が影響を受けて尿がこらえられずに漏れてしまう「尿失禁」という状態になります。ほとんどの場合3~6ヶ月程度で日常生活に困らない程度(パッド0~1枚)に回復します。最近では技術の向上により尿失禁の程度は軽減しており、手術直後からほとんど漏れない方も増えています。

手術後勃起はどうなりますか?

前立腺がんの状況によっては前立腺といっしょに勃起に関係する神経を切除することがあり、その場合はほとんどの方が勃起しなくなります。がんの性質が悪くなければ神経を残すことも可能ですので担当医師と相談されると良いと思います。

ロボット支援手術とミニマム創内視鏡下手術の違いを教えてください。

現在本邦では、前立腺の低侵襲手術としてロボット支援腹腔鏡下手術、腹腔鏡下手術、ミニマム創内視鏡下手術があります。ロボット支援手術は、Intuitive Surgical社が開発したda-Vinciという手術支援ロボットを使用して行う手術です。多関節鉗子による精細な手術手技が可能となっていることが特徴的で、通常は腹腔を経由して手術を行います。ミニマム創手術は小切開創から内視鏡を挿入して行う手術です。腹腔を経由せずに後腹膜腔で手術を行うという特徴があります。手術法の選択については担当医と相談してください。

放射線治療はどのような方法がありますか?

放射線治療には体の外から放射線をあてるもの(外照射)と前立腺の中に放射線を出す小さな金属の粒を埋め込む方法(小線源治療ないしブラキセラピーと呼ばれています)があります。また、最近では放射線として重粒子線や陽子線を使用する治療もありますが、当院では行っておりません。担当医とご相談してください。

IMRT(強度変調放射線治療)とはどのような治療法ですか?

現在の放射線治療(外照射)の方法として標準的なものの一つです。ホルモン療法を併用して行うことがあります。前立腺周囲(直腸、膀胱)にあたる線量を下げるために、照射野をコンピューターにより細かく設定し、実施します。放射線の副作用を低減するために分割して照射を行います。一回当たりの治療時間は30分程度ですが、35―39回の通院(約8週間)が必要です。治療効果としては手術療法(前立腺全摘除)とほぼ同等と言われています。副作用として、頻尿や性機能障害(精液量減少、勃起不全)があります。また、頻度は比較的少ないものの、放射線性膀胱直腸障害(出血性膀胱炎、直腸炎、直腸潰瘍)など一度起きると難治性の合併症が起こることがあります。

放射線を埋め込む方法(小線源療法)とはどのような治療法ですか。

前立腺の中に放射線を出す小さな金属を、股の間から細い針を通していくつも挿入して、前立腺がんを治療することを目的とします。当院では通常4日間の入院で行っております。転移のない早期の前立腺がんの方が治療の対象になります。ただし、検査の結果で前立腺が大きい方など病状によってはかならずしも受けられませんので、担当医にご相談ください。副作用は手術に比べて少ないとされていますが、頻尿や排尿困難などの排尿症状で内服薬が必要になることもあります。治療後かなり時間が経過してから勃起障害・尿もれなどがおきることもあります。
小線源治療は外照射やホルモン療法と併用することがあります。

前立腺全部ではなくて、病気の部分だけの治療(前立腺局所療法)はできますか?

精密な術前評価(MRIと生検)により癌の分布が一部だけであり、かつ癌の悪性度が高くない場合であれば可能な場合もあります。当院では小線源治療の線源を部分的に埋め込むことにより部分治療を実施しております。ご希望の方は担当医とご相談ください。
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文責:松岡・上原