全身の拡散強調MRI画像(前立腺がん)
DWIBS法による全身の拡散強調MRI画像について
および DWIBS法を用いたホルモン療法抵抗性前立腺がんに対する
個別化治療としての標的放射線治療について
DWIBS法を用いて、侵襲なく(放射線被曝なし、造影剤なし)、一度に全身のがんの広がりと活動性を評価
拡散強調MRIは組織内の水分子の動きである拡散運動を画像化する機能的画像診断法です。がん組織を明瞭な高信号として描出し、周囲の正常組織の信号を抑制するため、拡散強調MRIはがん組織の診断に優れております。
拡散強調MRIについてはこちらを参照ください。
これまで通常のMRI検査では、一度の検査では体の一部分のみの評価しか行えませんでした。しかしながら、2004年に、Diffusion-weighted whole-body imaging with background body signal suppression (DWIBS)法(ドゥイブス法)が開発され、全身の拡散強調MRIを一度の検査で撮影することができるようになりました (Radiat Med, 22: 275, 2004)。拡散強調MRIは、造影剤を使用しなくても撮影可能なため、DWIBS法は安価かつ安全に、一度に全身を評価できる画像法です。
DWIBS法は全身のがん病変の拾い上げを可能とするとともに、がん組織の活性の評価、また治療効果判定を含めた経過観察等における有用性が高いことが示されており、多くのがんの評価に使用されるようになってきました。このDWIBS法を使用した全身拡散強調MRI検査は近年、新規画像診断法 (Next generation imaging) とも称されています。当科では2014年よりDWIBS法を泌尿器がんの広がりの評価に積極的に用いています。
前立腺がんに対する全身拡散強調MRI
DWIBS法を使用した全身拡散強調MRI検査は、特に前立腺がんに多い骨転移(造骨型)の評価において、造骨性変化としての骨の代謝を画像化する骨シンチグラフィーよりも感度に優れています。また、骨髄内の腫瘍の状態や細胞密度を反映するMRIや拡散強調MRIは、溶骨型の転移性骨病変、および従来の画像診断法では困難であった造骨型骨転移の活動性や治療効果を評価可能とします。
そのため、これまで前立腺がんの治療効果は全身の病変量全体を反映した血清マーカーであるPSA値の変化により評価されてきましたが、DWIBS法を併用した全身拡散強調MRI検査により、前立腺がんの活動性病変の評価とともに、転移性病変それぞれに対する治療効果の評価が可能になっております。1-3)
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DWIBS法を含めた全身のMRI検査は非常に多くの情報を含んでおります。そこで、全身の画像情報を直感的に一見で把握するのに、DWIBS法の最大値投影像(MIP: maximum intensity projection)の回転表示像の観察が有用です。
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DWIBS法の信号と従来の画像法を重ね合わせたFusion画像により、一見して活動性の病変の広がりが評価できます。
DWIBS法を用いた去勢抵抗性前立腺がんに対する個別化治療としての標的放射線治療
転移性前立腺がんに対しては、主にホルモン療法や抗がん剤治療といった全身治療が行われています。しかしながら、近年、転移箇所が限られた転移性前立腺がんの方に、前立腺局所や転移部位に対する積極的な局所治療も考慮されるようになってきました。これまで、様々ながんにおいて、この全身療法と局所療法を組み合わせた集学的な治療による治療成績の向上が確認されており、ホルモン療法に抵抗性となった前立腺がん(去勢抵抗性前立腺がん)の方に対して、有効な治療戦略となることが期待されます。
局所療法を行う上で重要なことは、治療対象となる活動性のある病変を的確に同定することです。しかしながら、従来使用されてきた画像診断法では、前立腺がんが転移しやすい骨の病変の活動性を評価することは困難でした。当科では、DWIBS法を使用した全身拡散強調MRI検査を用いた前立腺がんの活動性転移病変の広がりの評価を行い、活動性病変が3箇所以下の転移箇所が限られたがん (オリゴ転移がん) の方に対する、個別化診療としての標的放射線療法を行っています。
2014年より2018年に23名の去勢抵抗性のオリゴ転移がんの方が、ホルモン療法に加え、前立腺局所や転移部位に対する放射線治療を行っており、91%の方で腫瘍マーカーであるPSAの低下 (70%の方で50%以上のPSA低下) と良好な治療効果が得られています。1)
この新規画像診断法を使用した、去勢抵抗性前立腺がんに対する個別化診療をご希望される方がおりましたら、当科外来にてご相談いただけますようお願いいたします。

当科からの国際学術紙報告
Yoshida S, Takahara T, Arita Y, et al. Progressive Site-Directed Therapy for Castration-Resistant Prostate Cancer: Localization of the Progressive Site as a Prognostic Factor. Int J Radiat Oncol Biol Phys. 105(2); 376-81, 2019. PubMed
Yoshida S, Takahara T, Ishii C, et al. METastasis Reporting and Data System for Prostate Cancer as a Prognostic Imaging Marker in Castration-resistant Prostate Cancer. Clin Genitourin Cancer. 18(4); e391-6, 2020. PubMed
Yoshida S, Takahara T, Arita Y, et al. Patterns of failure after progressive site-directed therapy in oligo-progressive castration-resistant prostate cancer. Int J Urol. 27(7); 634-5, 2020. PubMed
Yoshida S, Takahara T, Yokoyama M, et al. Can progressive site-directed therapy prolong the efficacy of subsequent androgen receptor axis-targeted drugs in oligometastatic castration-resistant prostate cancer? Int J Urol. 28(2); 241-2, 2021. PubMed
Yoshida S, Takahara T, Arita Y, et al. Genuine- and induced-oligometastatic castration-resistant prostate cancer: clinical features and clinical outcomes after progressive site-directed therapy. Int Urol Nephrol. 53(6); 1119-25, 2021. PubMed
Yoshida S, Takahara T, Arita Y, et al. Impact of Progressive Site-Directed Therapy in Oligometastatic Castration-Resistant Prostate Cancer on Subsequent Treatment Response. Cancers (Basel). 14(3); 567, 2022. PubMed
Yoshida S, Takahara T, Arita Y, et al. Patterns of recurrence in genuine and induced oligometastatic castration-resistant prostate cancer treated with progressive site-directed therapy. Int J Urol. 30(2); 204-10, 2023. PubMed
Yoshida S, Takahara T, Tanaka H, et al. The role of prostate-specific antigen changes in predicting overall survival after progressive-site directed therapy for oligoprogressive castration-resistant prostate cancer. Int J Urol. 30(7); 616-7, 2023. PubMed
Yasuda Y, Yoshida S, Matsubara D, et al. Outcomes and Safety Profile of Repeated Progressive Site-Directed Therapy for Patients With Oligometastatic Castration-Resistant Prostate Cancer. Int J Urol. 2025. PubMed




