ICCA療法(腎がん)
進行腎がんに対するI-CCA療法(分子標的免疫療法)
I-CCA療法は、転移を有する、あるいは手術を行うことが困難な、進行した腎がんの患者さんが対象となります。I-CCA療法は、分子標的治療薬と同等の効果が期待でき、副作用はより軽度で、かつ低コストな治療です。
肺や肝臓など、他の臓器に転移、再発を認める場合や、腎臓の周囲へ浸潤している場合などの進行した腎がんは、抗がん剤、放射線療法の効果が小さく、インターフェロン-αなどの免疫療法も無作為化試験にて全生存率の延長が見られることが示されてはおりますが、効果を示す患者さんは10-15%程度と満足できるものではありませんでした。
一方、分子標的治療薬は、現在、米国では、切除後再発をおこした患者さん、もしくは切除不能の腎がんの患者さんへの第一選択薬として推奨されており、比較的良好な腫瘍の縮小効果が報告されております。しかし、生存期間の延長は数か月であり、長期にわたる完全寛解が得られる患者さんはごく少数であります。副作用が起きる確立も高く、時としては強い症状が起きることがあります(特に日本人では)。また、きわめて高価です。
当科では、腎がんに対する抗腫瘍効果が報告され、かつ、副作用が軽度な以下の3種類の薬剤をインターフェロン-αに加えた、I-CCA療法を、進行腎がんに対する第一選択として行ない、優れた成績を報告してきました(Kidney Cancer Association 2009招請講演 シカゴ)。
シメチジン:免疫を賦活化し、腎がんの血管新生を抑制する作用
COX-2阻害剤:腎がんの血管新生を抑制する作用
アンギオテンシンII受容体拮抗剤:腎がんの血管新生、進行を抑制する作用
I-CCA療法は、分子標的治療薬に匹敵する高い抗腫瘍効果を示しながらも、副作用はより軽度で、費用は分子標的治療薬の約3分の1と安価です。さらに、通常、インターフェロン-αが効きにくいとされる症例、例えば肝転移を有する患者さんに対しても高い奏効率が期待でき、さらに分子標的治療では困難であった長期の完全寛解が期待できます。
当科では、現在までに50名以上の患者さんに対して、 I-CCA療法を行ってきました。50%以上のがんの縮小を認めた患者さんの割合は22%であり、がんの進行を半年以上抑制できた患者さんを含めると、67%の方に本治療の効果を認めました。さらに、長期間の完全寛解が8%の方に得られました。がんの進行を認めない期間(無増悪生存期間)の中央値は12カ月であり、分子標的治療薬とほぼ同等の成績です。副作用はインターフェロン-αによる、発熱、だるさ、関節痛、うつ症状以外にはほとんどなく、現時点で、I-CCA療法による重篤な副作用は認めておりません。
転移を有する腎がんの根治は比較的困難ではありますが、I-CCA療法や分子標的治療薬を順次に使用することで、より長期間の病勢安定が得られる可能性があります。実際、分子標的治療薬は、I-CCA療法を使用した後でも、有効であり、順次治療として、分子標的治療に先んじてI-CCA療法を行うことは、長期間の病勢安定のみならず、副作用の軽減につながるものと私たちは考えております。