主な診療と治療

尿失禁

なぜ尿が漏れるようになってしまうのですか?

尿失禁には大きく分けて3種類あります。一つ目は腹圧性尿失禁といって、尿道を締める尿道括約筋の機能が低下することで、運動やくしゃみなど下腹部に力が入った時に尿漏れが生じるものです。女性では出産や加齢、体重増加が原因となり、男性では主に前立腺がんに対する前立腺全摘除が原因となります。二つ目は切迫性尿失禁といって、膀胱が過敏となったため急激な強い尿意に対してこらえがきかず尿漏れが生じるものです。過活動膀胱の一つの症状で、原因は加齢のほか、脳血管障害や前立腺肥大症、慢性炎症などがありますが、原因がよくわからない方もいます。腹圧性尿失禁と切迫性尿失禁が合併する混合性尿失禁という状態もあります。三つ目は溢流(いつりゅう)性尿失禁といって、尿をうまく出せず常に膀胱内に多量の残尿があるため、少しずつ尿道から尿があふれてくるものです。糖尿病や脳・神経疾患などにより膀胱の機能に異常を来した神経因性膀胱や、重度の前立腺肥大症などが原因になります。ほかに、排尿後に下着を上げると少しだけ尿がにじむ排尿後尿滴下という現象がありますが、これは若く健康な方でも生じる生理現象です。

予防・治療はどのようなものがありますか?

腹圧性尿失禁は尿道括約筋の機能の低下が原因ですので、筋力の低下を防ぐ、あるいは回復させるトレーニングは副作用がなく有効です。肛門(女性の場合は腟も)を締めては緩めるという動作を繰り返す骨盤底筋訓練には、腹圧性尿失禁の予防、あるいは治療効果があります。薬物治療では、腹圧性尿失禁に保険適応があるものはクレンブテロールのみです。骨盤底筋訓練や薬物治療で十分に改善しない腹圧性尿失禁の方には手術を考慮します。手術については後述します。

切迫性尿失禁では、抗コリン薬やβ3作動薬と呼ばれる薬剤が治療の中心となります。また、切迫性尿失禁にも骨盤底筋訓練が有効であるというエビデンスがあり、ほかには排尿をできるだけ我慢する膀胱訓練も有効なことがあります。薬物治療が副作用のため続けられない、あるいは薬物治療で十分な効果が得られない切迫性尿失禁に対しては、電気や磁気による刺激療法も行われることがあります。

溢流性尿失禁では、その原因となる前立腺肥大症や神経因性膀胱に対する薬物治療や手術を行いますが、それでも十分に残尿が減らなければ自己導尿や膀胱カテーテル留置を続ける必要があります。

腹圧性尿失禁の手術にはどのようなものがあるのですか?

女性の腹圧性尿失禁に対しては、TVT手術あるいはTOT手術という手術を行います。腟と腹部あるいは大腿の付け根に小さい切開を3か所おき、尿道の下支えとなるメッシュのテープを留置することで失禁を改善させます。主に腰椎麻酔下に行う30-60分程度の手術で体への負担は軽微です。当科では3泊程度の入院で行っております。この手術では、留置したテープの張力が強すぎると排尿困難となることがあります。場合によってはうまく排尿できずに自己導尿が必要になることがあります。この状態が続く場合には留置したテープを切断する手術を行うこともあります。逆にテープの張力が弱いと十分に失禁が改善しないこともあります。

切迫性尿失禁の手術にはどのようなものがあるのですか?

薬物治療が副作用のため続けられない、あるいは十分な薬物療法を行なっても症状の改善がみられない難治性過活動膀胱に対しては、仙骨神経刺激療法やボツリヌストキシン膀胱壁内注入療法などを行います。

仙骨神経刺激療法は、排尿に関する仙骨神経を臀部皮下に植え込んだペースメーカーのような刺激装置が持続的に電気刺激することで、切迫性尿失禁などの症状を緩和する治療です。治療の流れとしては、臀部から針を刺入して仙骨神経近くに刺激電極(リード)を留置する一次手術を行った後に、1-2週間程度の体外式装置を用いた試験刺激期間を経て、症状の緩和がみられる患者さんに対して、刺激装置を臀部に植え込む二次手術を行うことになります。試験刺激期間で効果が得られなければ、リードを抜去し、術前と同じ状態に戻ります。ペースメーカーのような機械ですので、電池交換のための手術が必要になります(平均5年程度)。この手術は、インプラントの手術になであるため感染した場合は刺激装置を抜去しなければならなくなること、MRI検査に制限がかかることがあります。

ボツリヌストキシン膀胱壁内注入療法は、筋弛緩作用のあるボツリヌストキシンを尿道から挿入した膀胱鏡を用いて膀胱の筋肉に少量ずつ20-30箇所注入することで、膀胱の不意な収縮を抑え、症状の改善を期待する治療です。手術時間は短く患者さんへの負担は少ない治療ですが、術後に排尿困難、尿閉などで一時的に自己導尿を必要とする副作用があります。また、治療効果は半年程度で繰り返し行う必要があります。

前立腺全摘除後の尿失禁にはどのような治療がありますか?

前立腺全摘除後などで重度の尿失禁が続く男性患者さんに対しては、人工尿道括約筋という器具を植え込みます。尿道に巻いたカフが尿道を締め、尿意を感じたら陰嚢の中(精巣の隣)に埋め込んだポンプを操作することでカフが開き、排尿するという形になり、尿失禁は著明に改善します。全身麻酔下に行う2時間程度の手術で、4泊程度の入院で行っております。この手術では、器具の感染や尿道に傷がつくことがあり、留置した器具を抜去しなければならなくなることがあります。また、機械ですので故障することもあり、その場合尿失禁が再発します。また、人工尿道括約筋は尿失禁を100%改善させるものではなく、わずかな尿失禁は残存します(多くの患者さんは1日1枚程度のパッドを使用しています)。
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