主な診療と治療

副腎腫瘍治療ユニットについて

副腎腫瘍

副腎とはどんな臓器ですか?

副腎は両方の腎臓の上に帽子のようにのっている左右1対の臓器で、正常副腎の大きさは数cm程度です。表面の皮質と内部の髄質に分かれていて、非常に大切な各種のホルモンを産生しています。例えば、皮質からはコルチゾール、アルドステロン、性ホルモン、髄質からはアドレナリン、ノルアドレナリンなどを分泌しています。これらのホルモンは体の中でその濃度が一定に保たれ、過剰になったり不足したりしないように分泌量が調節されています。

副腎に腫瘍があると言われたのですが、どうすれば良いでしょうか?

最近は人間ドックの普及により副腎腫瘍が偶然発見されることが増えています。腫瘍からホルモンを過剰に分泌する機能性腫瘍、ホルモン分泌がない非機能性腫瘍で治療方針が異なるため、まずは内分泌内科などの専門内科で詳しく調べることが必要です。ただし、4㎝以上の大きな腫瘍については手術が必要となるため、機能性・非機能性にかかわらず、泌尿器科に相談してください。

どんな検査をするのですか?

採血検査・尿検査などでホルモンを過剰に産生していないかを調べます。また、大きさ・形状を調べるためにCT検査や超音波検査、必要に応じてMRI検査を行います。機能性腫瘍の場合は、存在部位をより正確に診断するために、シンチ検査や血管造影を実施する場合もあります。

どんな治療をするのですか?

原則として機能性腫瘍は、大きさにかかわらず手術で摘出します。ホルモンの作用を抑える薬で症状をコントロールすることもあります。非機能性腫瘍の場合は、手術をせずに様子を見ることが多いです。ただし、大きな腫瘍(4-5㎝以上)や、経過観察中に増大する場合は、悪性腫瘍の可能性もありますので、手術を検討します。過去に他のがんを患ったことがある方の場合は、そのがんの転移の可能性もありますので、まず主治医に相談してください。

手術の方法を教えてください。

当科では、原則としてミニマム創内視鏡下副腎摘除を行っています。本手術では、炭酸ガスを用いず、側腹部(第12肋骨先端)のシングルポートから、内視鏡下に副腎を摘出します。通常、翌日から食事や歩行ができ、数日以内に退院が可能です。後腹膜的に行いますので、腹部手術の既往のある患者さんでも適応となります。詳しくはミニマム創内視鏡下手術の項目をご覧下さい。

副腎腫瘍の症状を教えてください。

副腎の機能性腫瘍は主に産生するホルモンの種類により幾つかに分類されます。代表的なものとして、コルチゾールを過剰に分泌しているクッシング症候群、アルドステロンを分泌している原発性アルドステロン症、アドレナリン・ノルアドレナリンを分泌している褐色細胞腫があります。腫瘍が過剰に産生するホルモンの種類によって、後述する様々な症状が引き起こされます。

原発性アルドステロン症

機能性腫瘍のなかでは最も多く見られる疾患で、アルドステロンの過剰分泌により、高血圧、血中カリウム低値、筋力低下、手足のしびれなどを生じることがあります。

近年、高血圧患者の約5-10%前後が原発性アルドステロン症であることがわかってきており、内分泌性高血圧では最も頻度が高い疾患です。治療抵抗性を示す高血圧患者での頻度は更に高くなるものと考えられ、「原発性アルドステロン症」の可能性に関して適切に検査を行い、診断、治療することが重要です。

術後は、高血圧症の改善、血圧を下げる薬(降圧薬)の減量または中止が可能となることが多いです。高血圧の期間の長い患者さんでは手術後も長期間の降圧剤が必要な場合があります。

クッシング症候群

原発性アルドステロン症の次に多い疾患で、コルチゾールというホルモンの慢性的な過剰により、高血圧、糖尿病、免疫力低下、多毛、肥満(手足は細い)、骨粗鬆症などが引き起こされます。腫瘍を摘出することによりこれらの症状の改善が期待できます。

褐色細胞腫

アドレナリン・ノルアドレナリンの作用により、高血圧、脈が速い、頭痛、便秘、高血糖などの症状を呈します。また普段は何も症状がないのに、運動・ストレス・刺激により発作的に症状が出ることもあります。原則として摘出術が必要ですが、血圧・血糖の急激な変動に対する術前から術後にかけての綿密な管理が必要になります。時に悪性例もあるため、手術後も経過観察が重要です。

がんの可能性はありますか?

まれですが、副腎にもがんがあり、腫瘍が4-5cm以上と大きい時に疑われます。手術療法、特に周囲臓器の合併切除も念頭にいれた拡大切除が重要になります。我々は必要に応じて、外科と連携し手術を検討しています。

私たちは、再発例・転移例に対して、化学放射線療法と手術などを組み合わせた集学的治療を積極的に行っています。

最後に

当院では、副腎腫瘍の適切な診断・治療にあたり、内分泌内科(診断・内科的治療)、放射線科(画像診断、静脈サンプリング)、泌尿器科(手術治療)、病理部(組織診断)の密接な連携を行っています。

文責:石岡・早稲田