主な診療と治療

前立腺肥大症

どのような病気ですか。

男性では尿道の奥の部分は前立腺に囲まれています。前立腺は精液の一部を作ります。通常は栗の実ほどの大きさですが年齢が高くなると前立腺が大きくなり、中を通っている尿道を押しつぶしたりして尿の出が悪くなります。これが前立腺肥大症です。

最近尿のきれが悪いのですが前立腺肥大症でしょうか。

前立腺肥大症では排尿がだらだらと長引いてなかなか終わらないことが良くみられ「尿の切れが悪い」と表現されることが多いようです。一方、年齢が進むにつれて尿道の緊張が弱くなり、排尿が終わっても尿道がぴたっとしまらなくなることがあります。男性では尿道が長いため中にかなりのスペースがあり、ここに尿が残ってしまうことがあります。このような場合、排尿後に座ったり、ズボンを上げたりした時に尿がじわっと染み出ることがあります。これも「尿のきれが悪い」と表現されることがありますが、前立腺肥大がなくても起こります。

夜トイレに行く回数が増えましたが前立腺肥大症のためでしょうか?

夜、床についてから排尿のため何度もトイレに行くようになるのも前立腺肥大症の症状の一つです。しかし夜間の排尿回数が増えたから必ず前立腺肥大症というわけではありません。年齢が進むと眠りが浅くなり、このため排尿回数が増えることがあります。また特に高齢者では夜間の尿量が増えるため、寝てからの排尿回数が増えます。食事や水分をとった時間とおおよその水分量、排尿した時間とおおよその排尿量を日記としてつけてみると参考になると思います。なお心臓病や高血圧、糖尿病などでも、その影響で尿が近くなることがあります。医療機関でご相談される際はお薬手帳を一緒に持っていかれると良いと思います。

国際前立腺症状スコア(IPSS)ってなんですか。

前立腺に関係する症状(尿の勢い、排尿回数、尿が残った感じなど)を点数化して重症度、治療中の症状の変化をみるための質問表です。一般に7点以下が軽症、20点以上が重症とされています。もともとは欧米で作られたもので、日本語訳したものが使われています。

最近の排尿について な し 5回に1回未満 2回に1回未満 2回に1回位 2回に1回以上 ほとんどいつも スコア
1 排尿後、尿がまだ残っている感じがありましたか? 0 1 2 3 4 5
2 排尿後2時間以内に、またトイレに行きたくなった事がありましたか? 0 1 2 3 4 5
3 排尿の途中で尿が途切れる事がありますか? 0 1 2 3 4 5
4 排尿を我慢するのが辛い事がありましたか? 0 1 2 3 4 5
5 尿の勢いが弱いことがありましたか? 0 1 2 3 4 5
6 排尿開始時にいきむ必要がありましたか? 0 1 2 3 4 5
7 夜寝てから朝起きるまで、何回トイレに行きましたか? 0 1 2 3 4 5

【合計点と評価】
◆7点以下:軽度症状 ◆8~19点:中等度症状 ◆20点以上:重度症状

どのような検査が行われますか。

前立腺肥大症が疑われる場合は肛門から指を入れて前立腺の状況をみる直腸診が行われます。尿流量測定検査(ウロフロメトリー)はトイレと同じような構造の専用の測定装置で排尿の勢いを測る検査です。腹部超音波検査は体の外から前立腺の形、大きさを見る検査で、痛みもなく負担の少ない検査です。また前立腺がんの心配がないかどうかを見るため前立腺特異抗原(PSA)という血液検査を行います。これらの一般的な検査のほかに皆さんの状況に応じて特殊な検査を行うこともあります。

前立腺肥大症は前立腺がんになりますか。

前立腺肥大症と前立腺がんは別の病気であり、前立腺肥大症が前立腺がんになることはありません。ただし前立腺肥大症と前立腺がんが一緒にみられることがありますので前立腺特異抗原(PSA)という血液検査を受けて前立腺がんの心配がないかどうかを確認しておくと安心でしょう。 ただ前立腺肥大症だけでもPSAが上昇することがありますので、PSAが高い時の解釈には注意が必要なことがあります。

どのような治療がありますか。

前立腺がそれほど大きくなく、症状も軽い場合はそのまま経過を見るか、お薬を飲んでいただくことになります。前立腺がさらに大きくなってくると尿を全部出せないで一部が膀胱に残ってしまったり(残尿)、ひどい場合は尿をしたいのに自分では出せなくなったりする(尿閉)こともあります。このような場合は手術が必要と考えられます。尿道に内視鏡を入れて電気メスで前立腺を細かく削り取る「経尿道的前立腺切除術=TURP」が一般的です。レーザーを用いて前立腺を切除あるいは蒸散させる手術(HoLEP、あるいはPVP)も一部の施設で行われております(現在、この二つの手術は当教室の関連施設で行っています)。

お薬はどのようなものがありますか。

α遮断薬に分類されるタムスロシン、ナフトピジル、シロドシンなどが最も多く用いられます。これらの薬剤は膀胱の出口を広げる作用があり、尿がスムーズに出るようになります。ほかに、似たような作用を持つPDE5阻害薬であるタダラフィルや、男性ホルモンの働きを抑えて前立腺を縮小させる5α還元酵素阻害薬であるデュタステリドなども用いられます。また、前立腺肥大症のために尿が近くなっているような場合には、そういった症状を抑えるβ3作動薬や抗コリン薬を併用することもあります。それぞれの薬剤には副作用や禁忌などがありますので、薬剤の使用の際は主治医とよく相談してください。

手術後はどうなりますか。

通常、尿の勢いは良くなり、残尿も減ります。しかし、尿が近い症状などについては必ずしも良くならないことがあり、薬を追加することもあります。また、多くの場合、手術後は射精時に精液が出てこなくなることがあります。手術で削った組織に病理検査を行うことでがんが見つかることもあります。追加の治療を行わずに経過を見るだけのこともありますが、がんの状態を評価した結果、がんに対する手術や放射線治療が必要になることもあります。

生活で注意する点はありますか。

前立腺肥大症が高度の場合はお酒を飲んだあとに症状が悪化し、ひどい場合は尿を出したくても自分では出せない状態(尿閉と呼ばれます)になることがあります。前立腺肥大症が軽度で適量であればあまり神経質になる必要はありませんが、できれば飲酒はひかえめが無難と思われます。風邪薬の成分のなかに膀胱の機能を低下させるものがあり、尿閉の原因になることもあります。ほかにも、抗不整脈薬、抗うつ剤、精神安定剤、睡眠薬、頻尿改善薬などの中には尿を出にくくするものがあります。医療機関を受診されるときは前立腺肥大症があることをあらかじめ担当医師につたえておくと良いでしょう。

文責:横山