膀胱がん
- どのような病気ですか。
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膀胱がんの好発年齢は60~70歳代で、高齢者に多いがんです。男性の方が女性より多くみられます。喫煙は重要な危険因子です。膀胱の内部は尿路上皮粘膜でおおわれていますが、同様の粘膜を有するその他の尿路(腎盂・尿管・前立腺部尿道)に病気を合併することもあります。再発率も高く、長期に経過観察が必要な病気です。
- どんな症状に気をつけたらよいでしょうか。
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- 多くの患者さんが痛みのない血尿で診断されます。自然に血尿がおさまってしまう場合もありますが、自分でよくなったと判断せずに診察を受けたほうが良いでしょう。
- 排尿時の痛み、排尿回数の増加など膀胱炎のような症状から膀胱がんがみつかることもあります。
- どんな検査が行われますか。
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- 膀胱の中をのぞく内視鏡検査(膀胱鏡)が中心となります。尿細胞診検査、超音波検査なども行われます。
- 膀胱鏡検査にてがんの存在が疑われた場合、次に病期の診断が必要になります。そのためにCTやMRIなどの画像検査が行われます。
- CTは主にリンパ節転移の有無、遠隔転移の有無等を調べるのに使われます。
- MRIは、がんの深達度診断に関して有用な検査です。
- 膀胱がんの「深達度」とはどのようなものですか。
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- がんが膀胱壁のどの深さまで達しているかを示すのが深達度です。膀胱がんは深達度によって、筋層非浸潤がんと筋層浸潤がんに大別されます。膀胱壁は、内側から、粘膜、粘膜下層、筋層、漿膜が重なった構造になっています。粘膜から発生したがんが、粘膜下層までにとどまるのが筋層非浸潤がん、筋層以上に浸潤するのが筋層浸潤がんです。
- 筋層非浸潤がんと筋層浸潤がんは、性質が異なり、進行の仕方も違っています。そのため、両者は治療方針も異なります。一般に、筋層非浸潤がんは予後がよく、筋層浸潤がんは予後が悪いとされています。ただし、筋層非浸潤がんの中には、「上皮内がん」という予後の悪い種類もあります。上皮内がんは、悪性度の高いがん細胞が、粘膜に沿って広がっていくタイプのがんです。
- どんな治療が行われるか教えてください。
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- 膀胱がんの治療は深達度ならびに転移の有無により決められます。
- 膀胱がんが疑われた場合、初期治療として経尿道的膀胱腫瘍切除(TURBT)を行います。TURBT時における膀胱がんの検出率を向上させるために、光線力学診断用剤である5-アミノレブリン酸(5-aminolevulinic acid: 5-ALA)を用いた光線力学診断(photodynamic diagnosis: PDD)が行われます。(詳しくはこちらへ)その後、切除した腫瘍の病理組織学的診断に基づいて、どのような治療が適切か検討することになります。
- 膀胱がんは再発が多いため、筋層にまで及んでいない場合(筋層非浸潤がん)でも再発予防の目的で、治療後に膀胱内に抗がん剤やBCGを注入する場合もあります。
- 筋層にまで及んでいる場合(筋層浸潤がん)は、一般的には膀胱全摘除と尿路変向が行われます。また、がんの場所や個数によっては、膀胱温存療法が可能な場合もあり、当院でも取り組んでいます。(詳しくはこちらへ)
- 診断時あるいは術後に再発(転移)が認められた場合には、全身化学療法が標準治療となります。また、全身化学療法で効果がなかった場合や全身化学療法後に再発した場合には、免疫チェックポイント阻害薬のペムブロリズマブによる治療が行われます。(詳しくはこちらへ)
- 膀胱をとる手術を受けた後はどうなりますか。
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膀胱がなくなりますので、新たに尿の通り道や出口を作る手術が必要です。腸の一部を使ってお腹に尿の出口を作る手術(回腸導管造設)や、腸を使って膀胱の代わりの袋を作り尿道につなぐ手術(回腸新膀胱など)を行っています。回腸導管では尿の出口に専用の袋をつける必要がありますが、回腸新膀胱では尿道から排尿できますのでお腹に袋をつける必要はありません。それぞれ一長一短があり、どちらが適切かは病状によりますので担当医師と相談が必要です。
- タバコはやめなければなりませんか。
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タバコを吸う人は吸わない人に比べて2~4倍膀胱がんにかかりやすいとされています。膀胱がんにかかったあともタバコを吸い続けると再発の危険性が高まり、また悪性度の高いがんへ進行する場合が少なくないとされています。手術を行う際にも、心臓や肺に関連した合併症の危険性が高くなるため、是非やめるようにしてください。
文責:齋藤・安田