主な診療と治療

去勢抵抗性前立腺がんの治療

内分泌治療を続けています。一度下がったPSAが最近上昇してきました。症状はありませんが、去勢抵抗性前立腺がんでしょうか?

内分泌治療中のPSAは若干変動しますが、テストステロンが十分に抑えられた状態(去勢状態)で、連続して上昇した場合は去勢抵抗性前立腺がんと考えてよいでしょう(実際には厳密な診断基準があります)。また、PSAの上昇が認められなくても、画像(CT/PETCT/骨シンチグラフィ/全身MRI)上で既知の転移の増大や新たな転移の出現が確認された場合も去勢抵抗性であると判断されます。

転移がなくても去勢抵抗性前立腺がんと診断されることがありますか?

PSAの上昇により去勢抵抗性前立腺がんと診断された場合でも、転移が指摘できないことがあります。転移が指摘できない方に対しても、病状に応じて今までの内分泌治療に加えて、新しい薬剤を追加することがあります。

去勢抵抗性前立腺がんの治療は難しいと聞いたのですが?

以前は、去勢抵抗性前立腺がんの治療に対する治療法といえば、抗がん剤であるドセタキセルや、ステロイドや女性ホルモン剤の内服に限られていました。しかし最近は、新しい内分泌治療(新規抗アンドロゲン剤であるエンザルタミド・アパルタミド・ダロルタミド、アンドロゲン合成阻害薬であるアビラテロン)およびタキサン系の新規抗がん剤(カバジタキセル)、ラジウム223の有効性が知られております。一方で、選択肢が増えたがゆえに、患者さん個々人の状態によってその都度最適な治療法を選択する必要が生じてきています。東京科学大学泌尿器科では、これらの二次治療を効果的に使用するための順次的治療を、精緻な画像診断をもとに行っています。画像所見に基づいた個別化医療の一つの例として、活動性病変に対する標的療法を行っています。現在でも去勢抵抗性前立腺がんは完全に治すのは難しいですが、患者さんが辛くない治療で、ご病気を上手にコントロールして元気に長生きされることを目標にしています。

文責:松岡・上原