先進的な医療

放射線性出血性膀胱炎に対する高気圧酸素治療(Hyperbaric oxygen therapy: HBO)

骨盤内臓器(膀胱、前立腺、子宮、直腸など)のがんに対して放射線治療を受けると、晩期障害(治療後数か月以上経過してから生じる合併症)として放射線性出血性膀胱炎が生じることがあります。一定量の放射線が照射されると、血管の内面を覆っている細胞がダメージを受け、膀胱組織に血液を届けにくくなった結果、膀胱粘膜面に存在する網目状の血管が異常に拡張します。この拡張した血管は破たんしやすく、わずかな刺激でも(実際には刺激となる特定の原因はわからず、通常の生活の中でも)出血してしまうことがその病態となっています。前立腺がんに対する放射線療法では、比較的軽度の血尿を呈する出血性膀胱炎は10%程度生じ、輸血や止血手術などを必要とする重症のものは1-2%程度に生じるとも報告されています。

放射線が照射された組織は治りにくくなっているため、自然に止血されないことや、いったん出血が止まっても再発を繰り返すことが少なくありません。2019年に発表された放射線性出血性膀胱炎に対する診療アルゴリズム(図)では、経尿道的凝固術などで止血を得た後、地固め療法として高気圧酸素治療 を行うことが勧められています。高気圧酸素治療では、大量の酸素が血中に取り込まれることで、血流の悪い組織にも多くの酸素が供給され、組織の治りが良くなります。放射線の影響で血流が悪くなり破たんしやすくなった膀胱内の血管も、しっかり修復されることで再発しにくくなります。

当科では放射線出血性膀胱炎に対して、日本最大の治療装置を有する高気圧治療部の協力の下、積極的に高気圧酸素療法を行っております。これまで当院だけでなく、他院でがん治療を受けてこられた方の紹介も多く受け入れております。なお、上述の通り、本治療は地固め療法ですので、紹介の場合は原則として紹介元の医療機関で、経尿道的凝固術などで止血をしていただいております。

膀胱がんに対する5-アミノレブリン酸による蛍光膀胱鏡を用いた光線力学診断